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「東方伊吹伝」
第一章:夢への旅立ち

不思議な知り合い

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 宴会から一夜明けた翌日の朝。
 母に向かって宣言したはいいが、無謀な行動に出た自分に一人悩んでいる大和であった。



 あとになって大母様に乗せられたことに気付いた僕は、早まった自分に愚図りながら枕を濡らした。
 そして母さんへの宣戦布告から一夜明けた今日。僕は鬼の住処から離れ、一人で川の水を眺めながら考えを纏めている。

「このまま勝手に旅に出られる確率と、母さんに勝つ確立。どっちが高いかなぁ……」

 鬱だ。誰が妖怪最強って呼ばれる鬼の、しかも鬼の中でも格が違うと呼ばれている鬼に喧嘩を売るんだ。自殺願望でもあったのかなぁ……。
 勝てる要素なんてまーったく無い。でも勝たないと旅に出られないわけで。
 考えが行き詰った時には石を川へと投げ入れているから、そろそろ河童達が文句を言いに来るかもしれない。……そのまま山の外まで連れてってくれないかな。

 でも本当にどうしよう。
 『一撃でも入れたら大和の勝ち』って大母様が勝敗に付けたしてくれたけど、勝てる確率は上がったのかな?
 ……まだ勝ち目があると考えたい。ヘタレと言わないで、もともと勝ち目なんて無いんだから。

 でも母さんが能力を使って体を霧散させたら攻撃なんか当たらなくない?
 ……よし、深く考えないでおこう。母さんもそこまで本気にならないだろうし、何よりそれじゃあ僕の強さを測れないはずだと思いこんでおくことにする。
 とりあえず、僕は勝たないと駄目なんだ。だったら勝つために何かしよう。
 じゃあまずは、僕に出来ることをもう一度確認することから始めることにしよう。

 えーと、僕に出来るのは"魔力を使った身体強化" だけ。
 ……うん、これは無理だ。僕も一応は"能力" 持ちだけど、使いこなせないから戦力にならない。
 はぁ、やっぱり早まったのかなぁ。

「本当にどうしようかな……」

 そうやって無い頭を必死に回転させるも無いものは無いわけで。

「僕があの人みたいに頭が良ければ少しはいい案が浮かぶかもしれないんだけど」

 "あの人" って言うのは母さんの友達のことだ。癖なのか知らないけど、何時も扇で顔を隠している不思議な人。でもすごく頭が良くって、困った時は何時も助けてくれてる少し変な人。……それ以上に悪戯されてるけどさ。
 ――――姐さんは気に喰わないって言ってたっけ?
 良い人なのにね。
 ああもう、また思考が変な方向に……。考えが行き詰った時には石を投げて気持ちを切り替えよう。
 頭の中に薄ら笑いを浮かべる女性を想い浮かべながら、僕は石を手にとって投げてみると……

「は~い大和、元気に…ッブ!?」
「あー……紫さんは御変りないですか?」

 いきなり現れた女の人に石が当たった。

「な、なかなか有効な不意打ちね。紫さんも嬉しいわ」
「いきなり出てきた人に不意打ちなんて出来るわけないじゃないですか」

 紫色のふわふわした服に、傘とか呼ばれる長物。そして顔を隠す扇子。長い金色の髪は隠せてないけどね。
 この運悪く石に当たってしまった人こそ、スキマ妖怪の八雲紫さん。
 綺麗な放物線を描いた石が頭にもろに当たったみたいで、少し涙目になりながら頭を擦っている。

 こう見えて、紫さんはすごく博識だったりする。
 僕に旅のきっかけをくれたのも紫さんだし、"能力" があると教えてくれたのもこの人だ。
 扱い方までは教えてくれなかったけど。

「この借りはまた今度返すとして……聞いたわよ大和。萃香と決闘するんですって?」
「わざとじゃないのに!? それに何で知ってるんです!?」
「態とじゃなくてもよ。あと、何時何処でこのことを知ったのかは秘密」

 相変わらずの不思議さですね紫さん。そうやって扇子で表情を隠すからみんなから胡散臭いって言われるんだと思うんだ。
 僕だって紫さんと知り合ってから数年経つけど、未だにどんな人か解らないし。紫さんは誰のことでも何でも知ってるみたいだけどね。
 そんな紫さんからすれば、僕が何に悩んでいるのかも解っているのかな?

「フフ、もちろん解っているわ。大方萃香に勝ち目がなくて困っているんでしょう?」
「心を読まないで下さい」
「さあね。今日はそんな大和にいい物を持ってきてあげたの。な・ん・と、西洋の魔道書よ」
「ど、どうせまた僕をからかう冗談なんですよね? ひっかかりませんよーだ」

 と言いつつも、差し出された本に目が行ってしまう。
 ええい、落ち着くんだ僕! この手の冗談は日ごろからされている。前には魔道書だと言っていたのが、実は狐の絵巻だったこともあったじゃないか! どの狐が好み? なんて意見を求められたこともあった。確か、紫さんは"藍" とか言う狐を凄く推していた気がする。

「今回は正真正銘本物の魔道書よ?」
「うっ、嘘ですよね。また狐の絵巻なんでしょ?」
「あら、要らないのね。此処に効率のいい魔力運用についての項目が―――「紫さん! ありがとう!」 …現金ねぇ」

 煩いです。何時も弄られてばかりだから警戒してただけなんです。
 でも紫さんが素直に応援してくれるなんて……。いつもは冗談を言うか、母さんと一緒にいる僕をからかうばかりなのに今日は親切すぎる。きっと明日はみんなお酒を呑まないぞ。

「失礼ね。私だっていつも冗談ばかりではないの。時と場所はわきまえるものなのよ?」

心まで読む人に時と場所もないでしょうに。

「本当に失礼な子ね。そう言えば大和、あなた能力の方はどうなの? 少しは使えるようになった?」
「す、少しぐらいなら……ですね」
「嘘おっしゃい、あなたは嘘を吐くときは頬を手で掻くのよ? 今のように」
「え!?「う・そ」……あ゛」

 卑怯なり! 紫さん、卑怯なり!

「全く進歩してないようね。身体ばかり鍛えているだけではだめよ? せっかく強力な能力を持っているのに、それじゃあ台無しよ?」

 紫さんの言うことは解るんだけどなぁ……。どうやっても自分の能力を使えないんだ。
 いや、これも違うかな。言うならば、自分の能力が何なのかも掴めていないという表現が正しい。集中すると右目で未来が『視える』 から『未来を視る程度の能力』 としているけど、それが正しいのかも解らない。その上、使える時間と回数が恐ろしく少ないので使いどころも難しい。紫さんは強力だなんて言うけど、僕にしてみれば単なる使いにくい能力でしかない。

「面目ないです。でも、本当に解らないんです。確かに先のことが視えたりしますけど、なんかこう、しっくりこないというか……。ともかく、自分でも良く解らないんです」

 自信なく言う僕に、紫さんは溜息を吐いた。何だか悪いことをした気がする。
 そんな紫さんは少し思案した後、何時に無いほど真面目な顔をして僕を見つめ言った。

「心を静め、力の源泉を見つめなさい」
「……?」
「あなたは"静" の者。慌てず、ゆっくりと自分を探すといいわ。そういう意味では、貴方の旅はいいきっかけになりそうね」
「はあ、わかりました。って、紫さんは人の本質も解るんですか?」
「あらあら? 『何でも知っている』 と言ったのはあなたじゃない」

 本当におかしな人です。何考えてるのかわけわかんないや。

「じゃあ私はこれで帰るわ」
「母さんたちに会っていかないんですか?」
「それは今度の機会でいいわ。私も二人の決闘は見にくるから。じゃあね、大和」

 今度は扇子で顔を隠さず、紫さんは綺麗な笑みを浮かべながら僕の頭を撫でた。
 そのまま僕が何かを言う暇も与えずに、自身の能力で創った『スキマ』 に消えていった。
 ……と言うか、あの人も絶対に楽しんでるよ。最後に笑みを隠さなかったのが何よりの証拠だよ……。
 どうも僕の知り合いに親身になってくれる人はいないみたいだ。

 「まぁいいや。どうせやることは決まってるし」

 とにかく貰った魔道書を読み込むことから始めよう。聡明な紫さんが今この時に渡すんだから、きっと意味があるに違いない……はず。



   ◇



 あの子は相変わらず面白い。あの百面相は弄りがいがあるし、真っ直ぐな志は評価に値する。

「紫、何かあったのか?」
「……藍。紫様、でしょう?」
「っと、すいませんでした。まだ慣れていないようで」

 数年前に私の式になってくれた九尾の狐。私の家族の意味持込めて、八雲の性を送った妖怪屈指の実力者だ。忠実に私の命令をこなしてくれる、最高の式だと自負している。そんな妖怪を式にする己の実力も。

「大和に会ってきたわ」
「……そうか」
「相変わらず、外見は誰かさんにそっくりで元気だったわ」
「紫、それは――――」
「ん、大丈夫。それより、そろそろ分岐点よ」
「…! そうか、遂に来たか」

 あの子にきっかけを与えることには成功した。
 秘められた魔力について教え、あの子自身の力についても教えた。魔法使いという存在について教えたのも私。
 残念ながら武芸も魔法も才能はないみたいだけど、そこは努力と経験を積み重ねて貰うしかない。今後に期待と言ったところか。
 それよりもまずはこの分岐点。結果は揺るがないが、その過程は見物だ。大和はこの試練をどう乗り越えてくれるのか。それを考えるだけでも心が躍る。
 そして、今回の決闘は必ず成長の糧になる。
 私はあの子に期待している。だからあの子のこれからの為にも、そして私自身の目的のためにも強くなって貰わないければ困る。

「せいぜい足掻きなさいな。私達のいる高みまで這いあがってくるのを楽しみにしているわ」

 口を半月に歪ませ、私は嗤った。

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