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「東方伊吹伝」
第二章:外の世界

一期一会の出会い

 ←門出 →白髪の妖怪退治屋

 母さんたちに見送られたあと、予定していた通りに都を目指して歩き続けた。
 時刻は夕刻。太陽が真上に上がる前に出発したから、もう一日中歩いていたことになる。
 そのせいか、足の裏は痛いしふくらはぎも張って、今日はもう歩けそうにない。

「妖怪の山があんなに遠いや……」

 小脇に座り込んで振り返って見ると、住み慣れた山がとても遠く感じた。

「か――――」

 思わず出そうになった"母さん" をなんとか口の中で掻き消した。
 母さんと離れるのは嫌だった。
 皆とも離れたくなかった。
 でも今のままじゃ駄目だと思ったから、こうやって旅に出てたんだ。だから、寂しいくらいで弱音を吐いちゃいけないんだ。
 自分にそう言い聞かせて、山から持参した頭陀袋を開いた。

「晩御飯を入れておいたって言われたけど、何だろ。……うわぁ! おむすびだ!」

 山じゃあんまり手に入らないのに、どうやってお米を手に入れたんだろう? 近くに水田なんかないのに。でも僕の為に作ってくれたんだ、美味しく味わおう。
 顔の半分くらいはあるおむすびを頬張る。ちょっぴり塩からい。でも、今まで食べた中で一番美味しいと思える晩御飯だった。

「都、都……。紫さんは、あらゆる情報や物が集まる場所って言ってたっけ。だから、旅に出るなら最初はそこに行けって。母さんも都は面白い所だって言ってたし……うん、最初は都に行こう」

 げぽ、とげっぷを一つ。最初に行く場所を決めた。
 紫さんが行けって言ったから行くのはちょっと不安だ。あの人、ときどき面白半分で罠に嵌めようとするから。けれど、大事な時に嘘をついたりはしないのは知ってる。だから都なら何かがあるんだと思う。 それこそ、魔法使いについて詳しい人とか魔法に関わる物とか。
 それに、魔法使いの情報以外にもいろんな物がたくさんあると思う。母さんが面白いって言ってたくらいだ。僕が見たことも聞いたことも無いない物が沢山あるに違いない。そう考えると、今からとても楽しみだ。

 とは言っても、わざわざ都くんだりまで遊びに行くわけじゃないんだ。
 少しでも強くなるために、これからの道中は魔法糸を練習しながら歩いて行こう。いくら未熟とはいえ、母さんに素手で引きちぎられたのは衝撃だったからなぁ……。あれでも太い木とかは真っ二つになるんだよ?

「でも母さん、それを笑って引き千切ったんだよね。鬼って凄いよ」

 いくら効かないからって、少しくらいは躊躇ってくれてもいいと思うんだ。情け容赦なしに引き千切られた僕の魔力糸だって、話せるんだったらきっとそう言ったに違いないよ。
 それだけ自信があったから、本当に悔しかったんだ。
 だから練習しよう。
 悔しかった思いを糧に、次のために頑張ればいいんだから。

「う~ん……やっぱり魔力糸は対象をすぱすぱ切れますって書いてある」

 頭陀袋に入れてきた魔道書を取り出して、魔力糸の項目をもう一度見直してみる。
 そこに書いてある手順通りに魔力を薄くして指から出してみると、風に揺られてユラユラと流れた。
 母さんに引き千切られたこれがねぇ……。
 なんでだろう、まったくそういう感じには見えない。僕がまだまだ下手だからなんだろうけど、こんな細い糸で何とかなるものなのかな? 母さんなんて、何もなかったようにしてたしなぁ……。

「まあいいや。どうせこれしか出来ないんだし、やらないよりはやった方がマシなんだから。とりあえず、右の指全部で操れるようになろう」



   ◇



「や、やっと人間がいる場所に辿り着いた……」

 妖怪の山を出て二日。
 歩き続けて漸く小さな人里に辿り着くことが出来た。人里離れた場所で生活してきたけど、まさか山から人の住んでいる場所までがこんなに離れてるなんて思わなかったよ! …決して道に迷ったとか、そんなことはない!
 そう言えば、道中妖怪に襲われることが無かったんだよね。
 文に貰った笛に天狗の匂いとか妖力とかが付いてるんじゃないかな? って思ってるけど、あながち間違いじゃないと思う。何となく文の匂いもするし。だから寝る時は手に握って眠ってた。

 それはともかく、ここ二日は拾った木の実やら野草を食べて空腹を紛らわせていたけど、もう限界。
 人の手が入った料理が……母さんの焼いた魚が食べたい……。あ、駄目だ。寂しくて涙出そう。
 母さんの笑顔を思い出してちょっと涙目になったけど、それでも何か食べられる場所を探して歩く。母さんよりも食べ物が欲しい……。
 そうやって彷徨っていると、人間のおばちゃんが料理を運んでいるのを見つけた。いや、人間なのは当たり前なんだけど。
 僕、実は人間と会うのは片手で数えられるくらい……と言うか、会った事ない。だって妖怪の山から出たことないもん。
 鬼の兄さんたちは人攫いだ喧嘩だって山を降りることがあったけど、僕は山から出して貰えなかった。きょーいくじょーの問題だって母さんが言ってた。

 だからこのおばちゃんが僕の初めての人間との会話だ。
 なんだか凄く緊張してきたけど大丈夫かな? 田舎者だけど変なとことかないかな? ……うわーん! 文に人間のこと聞いとくんだった! って、僕も人間じゃないか!?

 よ、よし! ここで立ち止まるわけにはいかない! 行くぞ伊吹大和! 行くからね!
 僕はおばちゃんがいる家の中に入った。
 これが話に聞いた椅子……なのかな? 妖怪の山には造られた椅子なんて無いから合っているか解らないけど、人間が造った椅子らしきものに座ってみた。
 おぉ……おおお!? こんな細い足なのに壊れない!
 そうやって少し感動していると、おばちゃんが歩いてきた。

「坊や一人かい? 親御さんはどうしたの?」
「おっおや、親御……? 母さんのこと?」
「お母さんか、お父さんは一緒じゃないのかい?」
「いないよ。だって今は一人で都に向かっている途中だから」

 人間との初めての会話……なんだか、凄く、普通です……。
 凄く緊張したけど、人間も妖怪も変わらないじゃないか。なんだよ、緊張して損しちゃったよ。

「ああ……それは悪いことを聞いたねぇ。ここいらは妖怪がよく出るし、坊やも辛いだろうけど頑張んな。負けるんじゃないよ」
「…? はぁ、ありがとうございます?」

 なんだろう。心配してくれてるんだけど、何か誤解されたような気がする。

「見た所、手持ちは無さそうだね。まぁ一度きりだし、おばちゃんからの贈り物だと思って頂戴。ちょっと待っておき、すぐに温かい物を持ってくるから」

 そう言っておばちゃんは下がって行った。
 手持ちって言うのは、たぶん人間のお金のことなんだろう。それは文に教えて貰ったことがある。"お店ではお金を払う" んだ。
 でもあのおばちゃん、お金を払わなくていいって言ってた。凄く優しいよね。僕もお金を持ってないから凄く助かる。
 人間にも優しい人がいるんだね。どこも鬼の皆と変わらない。種族が違うだけで、僕たちの違いってほとんどないんだ。

 そうやって鬼と人間の違いについて考えていると、おばちゃんがおむすびを二個も持って来てくれた。
 食べていいの? と見上げると、どうぞって言われた。
 両手でおむすびを掴んで口に運ぶ。う~んっ、美味しいっ!

「坊やは旅の途中で聞いたことあるかい? 白髪の妖怪退治屋の話」
「白髪の妖怪退治屋?」

 一つ目のおむすびを食べ終わった所で、おばちゃんにそう聞かれた。

「旅をしてるのなら知らないかもしれないけれど、最近ここらの村々でも妖怪による被害があったんだよ。その村の生き残りが言っている噂がこの村まで聞こえてきたの。
 "妖怪が現れる黄昏時、闇を切り裂く白髪の退治屋が妖怪を滅す" って。
 その人の御蔭でその村は助かったそうなの。だから白髪の妖怪退治屋って噂が流れた。
 でも白髪なんてものだから誰も彼もが気味悪がって、しっかりとその人の顔を見た者はいないらしい。実は妖怪じゃないかって噂もあるくらいだよ。だから坊やも気をつけるんだよ?」

 白髪の妖怪退治屋……。妖怪の山にはそんな噂話は聞こえてこなかったかな。
 これでも妖怪の山の中での出来事とかには詳しいつもりなんだけど。逆に僕を知っている人も多いらしいけどね。母さんたちと一緒に居ると色々と、それはもう色々あったんだ。そのせいで、山の中じゃ僕を知る人が多いんだよね。
 だから、何かあれば教えてくれる人が居る思うんだけど、そんな僕も白髪の妖怪退治屋なんて人は天狗や鬼からも聞いたことはない。
 と言うことで、それほど強い人じゃないんだろうと一人完結してしまった。
 でも、もしこの里に来るのなら会ってみたい気はする。

「わかりました。注意します」
「そうしな。危ないことして、死んだお母ちゃんを悲しませるんじゃないよ?」

 おばちゃん、僕の母さんはまだ死んでません。



   ◇



 逢魔が時、僕は村の外れで白髪の妖怪退治屋が現れるのを楽しみに待っていた。
 やっぱり噂の退治屋に会ってみたくなったんだ。もしかしたら会えないかな? と思って能力を使って視れば、今日の夕方にその退治屋がこの村に現れることが解ったから余計に。
 僕が視たのは、長い白髪をした、おそらく女の人。
 その人が大蜘蛛を相手に闘っている姿が今でも目に焼き付いている。それ程をの女の人の後ろ姿がかっこ良かったってこともあるんだけど。

「早く現れないかなぁ」

 この時間は妖怪が動き出す時間だ。一応、妖怪が笛の影響で逃げないように頭陀袋の中に拾った薬草を野草と一緒に入れておいた。頭陀袋が膨れるくらい入れておいたから大丈夫だと思う。

 太陽が山に沈んでいく。
 村から少し離れた地面に座って待っているけど、女の人はまだ来ない。未来ではこの近くだったはずなのになぁ……。
 やっぱりこの笛の影響なのかな? 僕が近くに来たから、現れるはずの妖怪が逃げちゃった、とか。
 僕は気付いておくべきだった。なんで僕が女の人の後姿を視ていたのかを。

「グギギギギttuggaaaaaaaaaaaaa!!」
「え――――?」

 突然の叫び声。大地を揺らすほどの大音量が僕の身体を地面に縫い付けた。
 ――――後からって、だって太陽で影が……っ!
 太陽はもう沈んでしまっている。
 妖怪がそれを待っていたことに気付いた。始めから僕を狙っていた事も。
 ――――防がないと!
 動かない身体をなんとか上半身だけでも動かして振り返る。
 けど遅かった。目に映ったのは、目で視た大蜘蛛の妖怪が、その鋭い前足を振う姿だった。

「――――っ!」

 怖くて目を閉じてしまい、反射的に手で頭を守るように抱え込んだ。
 襲われた時に一番したら駄目なことなんだけどなぁ……。
 頭は何故か冷静だった。でも身体は来るであろう衝撃に身を震わせている。

 けど、いくら待っても鋭い痛みや身体を痛めつけるような衝撃は来なかった。
 聞こえてくるのは、何かが千切れ、地面に落ちた音と妖怪が苦しむ声。

「大丈夫か?」

 開いた目に映ったのは死神の鎌ではなく、綺麗な白髪をした妖怪退治屋の後姿だった。

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